異物検査を業務委託したら勘定科目はどうなるのか
食品を分析にかけて安全性を保証したり、規格を満たしていることを示したりしたいときには業務委託をするのが一般的です。異物検査はしばしば行われる検査の一つですが、初めて業務委託をすると勘定科目をどうするべきかで悩むかもしれません。
異物検査を実施したときにかかった費用の勘定科目がどれに分類されるのかを考えてみましょう。
勘定科目について原則をあらためて確認しよう
まず原則としてあらためて確認しておきたいのが、費用の種類と勘定科目の分類は一対一で紐付けられるものではないということです。もともと必要経費がどのような目的で使用されたものなのかを明確にするのが目的で使われているのが勘定科目なので、同じ種類の費用であっても目的が違えば分類が異なることがあります。
そのため、異物検査の費用だからこの勘定科目と必ずしも一対一で決められるわけではないということは念頭に置いておきましょう。
典型的な例として食事にかかった経費について考えてみるとわかりやすいでしょう。それが他社との会議の目的で軽食を出したという程度なら会議費になりますが、夕食にお酒を飲みながら豪華な食事をしたというときには接待交際費になるのが基本です。
また、従業員に対して労うために食事会を開いたという場合の費用であれば福利厚生費に分類されることになります。このように目的がわかっていないと正しい勘定科目を選び出すことはできないのです。異物検査の場合には一般的には研究開発費か支払手数料に分類されます。
どのようなときにどちらの勘定科目になるのかを少し詳しく確認しておきましょう。
研究開発費になるケース
異物検査にかかる費用が研究開発費になるというのは社内で新しい知見を生み出すための研究や開発、調査や試験をしている企業の場合には一般的です。食品の加工や調合などをしている工場を持っているときには、その現場でかなりの研究開発費が発生しているでしょう。
その業務の一環として異物検査が必要になったという考え方をすると研究開発費に分類するのが適当です。製品開発の途中で異物検査をして中間段階の品質を確認した場合でも、最後に検定を通過したり認証を受けたりするために業務委託をしたという場合であっても問題はありません。
あくまで自社における研究開発関連の事業のためにかかった費用として扱えるので適切な分類になります。研究開発費には人件費や原材料費なども含まれるので社内で異物検査を適切な試験法に従って実施したという場合にも、そのためにかかった諸々の費用を研究開発費に分類することになります。
例えば、試験をするためにノウハウを持っている人に業務委託で3ヶ月だけ来てもらって、自社のリソースを使って異物検査をしてもらったというときにもその業務委託費や購入した消耗品費などは研究開発費です。ただし、気をつけておきたいのが研究開発費は新しい知識や知見を生み出すための計画的な業務で発生した費用とされています。
通常行われている研究開発業務と関連性のない案件の異物検査の場合にはこの分類にするのは正しくはありません。
支払手数料になるケース
支払手数料は異物検査を業務委託したときには真っ先に考えておくとよい勘定科目です。名称だけ見るとお門違いではないかと考えてしまいがちですが、支払手数料は会社の経営や取引によって発生した各種手数料や手間賃だけでなく、報酬の支払いについても含む勘定科目になっています。
製品の安全性を確保して販売できるようにする、クレームに対応する、規格に適合していることを示すといった形で事業に必要な目的で異物検査を外部機関に委託した場合には報酬として支払うと位置付けて支払手数料にするのが通例です。
ただし、異物検査を社内のリソースだけで実施したという場合には支払手数料にすることはできません。あくまで業務委託による報酬の支払いという扱いにしなければならないため外部に検査を任せなければならないのです。
外部機関との取引であること、報酬や手数料として位置付けられることを満たしていることを確認した上で分類するのが大切です。異物検査を業務委託するときには業務委託費として直接支払うお金以外にも細々とした費用がかかりますが、その大半は支払手数料になるということも覚えておきましょう。
業務委託先に異物検査をしてもらうサンプルを送付するのにかかる郵送料や宅配料は通常は業務委託費に含まれています。到着したサンプルを保管してもらうのに保管料がかかる場合がありますが、保管料は支払手数料に含めることが可能です。
支払は銀行振込のことが多く、その送金料はやはり支払手数料になります。異物検査の委託先を他の会社に紹介してもらったときに斡旋手数料を払わなければならない場合にも支払手数料にして問題ありません。
食品分析の費用は上記のどちらかがほとんど
異物検査の業務委託をする会社では他の食品分析も外注することがしばしばあるでしょう。新しい検査を外部委託する度に、この勘定科目はどれになるのかと頭を悩ませてしまうかもしれません。ただ、異物検査に限らず食品分析にかかる業務委託の費用については上記の研究開発費、支払手数料のどちらかに分類することができるのが一般的です。
目的が明らかに違う場合には分類を再考する必要があるのは確かですが、基本的には同じ食品分析の括りの中にあるなら同じ勘定科目で処理できる場合がほとんどです。まとめていくつかの分析項目を挙げて発注するケースもあるものの、基本的には全て同じ勘定科目で問題ないというのが普通です。
悩んだときにはプロに相談しよう
経理としては検査の目的や内容がわからず苦労することもあるのは事実でしょう。しかし、どれも目的が共通していると考えられる場合が大半なので動じる必要はないのです。ただ、例外的なケースもあるので、同じ見積書に載っているけれど現場の話を聞いてみたら一つは研究開発費、もう一つは支払手数料の方が良いのではないかと考えられる場合もないわけではありません。
仕訳は誤りがないことや疑問を生まないようにすることが重要なので、悩んだときには税理士や公認会計士などのプロに相談してみるのが賢明です。些細なミスや思い込みが税務監査で大きな問題を引き起こしてしまうことにならないように無難な対策を立てるようにしましょう。